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街のさざめき・野のしじま
カメラをぶら下げた徘徊中年男は濁った眼で何を見るか
2009/04/07
水の音
子供の頃を過ごした岡山では、西日本の都市の多くがそうであるように、街の水は死んでいた。泥の底からぬたりと上るあぶくのメタン臭にむせながら、それでもフナや泥鰌を掬っては小さな命達の神になる真似事に耽った日々。
あれから何十年、信州ではいまだに水が生きている。松本は縄手の路地、時間の流れの止まったような一角に踏み入ると、高校野球のアナウンスや食器の触れあう音に混じってコポコポ聞こえる湧水の流れが心地よい。北アルプスの息遣いが暮らしを暮らしとしてまっとうに育むのか。酒を飲むには早すぎる午後。
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