2009/04/07

眼差し

街の記憶はいつだって焼けつく暑さか凍てつく寒さのどちらかと共に皮膚に刻まれている。

2月の善光寺、灯明祭り見物の時も、蒼い月の輝きが増した頃から冷え冷えとした空気が少しずつ盆地に沈殿し始め、帰る頃には車を遠くに置いた事を後悔する程。

駐車場に戻る途中、道の向こう側の花嫁衣装のウインドウにふと目が留まり、ガラス越しに一枚。首上のない彼女は具象化された幸せの衣を身に纏い、白い息を吐きながら家路に急ぐ人々を見つめているのか、いないのか。

2 件のコメント:

  1. RIVERSさん

    幸せをつつむ筈のドレスが纏うまえにセピア色…
    踏み出す一歩の不安が凝縮されているようで印象的。
    MarriageblueならぬMarriagesepiaなんて言葉も。
    何でもありの今の世にありそうな…。


    道行く人と連れている犬の息が白く豊かに靡いて見えるとき、
    ふと見とれることがあります。
    厳しい寒気の中で息づいている温かな体温を持つ存在として、あらためて実感。

     向ふからくる人ばかり息白く  波多野爽波

    往々にして己が息は見えぬもの。


    瑠璃

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  2. 初コメントありがとうございます。

    写真に特定の意味を持たせるのは本来あまり
    好きじゃないんですが、
    ウェディングドレス=幸せの象徴という
    ステレオタイプに嵌るよりは、と思います。

    自分の息は見えないですね。写真家の森山大道が
    この前TVで、結局何を撮っても自分が写るだけ
    みたいな事を言っていましたが、この句も人の息を
    詠む事で自分の心情が見えて来るんですねぇ・・。

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